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防災力とコミュニティの絆で住み良いまちに…芹橋二丁目自治会まちづくり部会

2019.6.20

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彦根の城下町は江戸時代の初めに彦根城の築城とともに整備され、町を守るように一番外側に足軽屋敷が配置された。足軽とは速く走る歩兵という意味で戦時に臨時雇用された鉄砲隊の兵士。その住まいは普通、長屋がほとんどだが彦根藩では門構えに塀で囲まれた庭付き一戸建て、小さいながらも武家屋敷のようだった。江戸幕府の大老を務め京の守護を担った彦根藩の誇りで、足軽衆の今で言うモチベーションがあがったのではないかと考えられている。最も規模が大きかった善利組(せりぐみ)は東西750m南北300mに700戸余りを数えたという。約400年後の現在、町割りは当時のままで路地に面して愛がる組屋敷が30数戸が点在する。数は激減したが一地域にこれだけまとまって現存するのは全国的にも珍しく、特に「辻番所」は全国唯一だという。辻番所は路地の辻(四つ角)に設置された小さな小屋で、足軽が24時間交替で城下町への侵入者を監視していた。一般公開されている辻番所を案内するのは「彦根辻番所の会」。芹橋2丁目自治会に設置されたまちづくり部会で会員を募りボランティアで活動している。

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まちづくり部会は足軽屋敷を含む空き家、住民の高齢化、路地の防災対策のために設置された。「文化遺産を守りながら災害に強く、住民の絆を深めるまちを目指しています。お年寄りや子どもに安全で安心な美しいまちがテーマです。」そう話すのは会員の大菅勝造さん。自治会、自主防災会、民生委員と連携して課題に取り組んでいる。空き家の所有者を調査して台風等の被害があれば連絡したり、足軽屋敷の売却情報が出ると解体でなく活用を条件に売却するよう所有者に依頼したり。また彦根市の移住コンシェルジュと連携して物件の紹介・案内をすることも。2018年は足軽屋敷を活用したロースイーツ販売とカフェHareto-Ketoのオープンをサポートした。「小江戸ひこね町屋情報バンクは物件を守り保存する条件で借りる人や買う人を探してくれますし、不動産のプロがいるので安心です。」当バンクも、物件の仲介だけではなく、管理の大変さや、地域の慣習、ご近所付き合いについても説明し、まちの一員となることへの理解を大切にしている。

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243世帯のうち75歳を超える独居世帯50軒(2019年現在)の見守りも活動の一つ。1人の要支援者に対し複数人の支援者で日頃の見守りと避難支援を行う。また地震などの大災害が発生した場合、路地は避難しにくい上ブロック塀や電柱の倒壊が予測される。自治会ではかわら版や防災だよりを定期的に編集・発行して啓発。辻番所の会とまちづくり部会で「まちづくり研究会」を開催し、歴史的文化遺産を守りながら防災に強いまちづくりをテーマに勉強会を開催する。これまで防災マップを作成し、8カ所の一時避難所を設置した。そして住民交流を目的として自治会と辻番所の会の共催で夏祭り、町内の菜園でさつまいも収穫祭、グランドゴルフ大会などコミュニティ活動を実施している。

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2020年の春には、古民家をリノベーションした憩いのサロンと5つの店舗が入るコミュニティ施設が開業予定だ。NPO法人善利組まちづくりネットを起ち上げ、国や彦根市の補助金を利用しながら準備を進めている。サロンはまず地域住民が気軽に立ち寄って交流できる場所とし、次に観光客などの地域体験や子どもたちの学びの場所にと考えている。2021年までには江戸時代の彦根藩で発展した湖東焼サロンが開館予定。これらのお店で楽しんだり足軽屋敷を見学したりできる散策コースを考案している。「居住区域でもあるので観光客の受け入れ体制を整えなければいけませんが、人が来るとまちが潤います。風景を次の世代へ引き継ぐためにも頑張っています。」協力して城下町を守っていた足軽衆のように、芹橋二丁目はひとの絆と実行力で歴史遺産を守る魅力的なまちだ。

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記事作成:長束知香子

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