top of page
思い出が新しい時を刻む「正(ファイブ)クロック仁」

2023.3.28

 かつて江戸時代のはじめに彦根城外堀と芹川の間の一帯は、足軽組屋敷が南から北へ 1 丁 目~15 丁目に区分され、現在でも軽自動車の通行もすれすれの1間半(2.7m)の路地が 残る。その足軽組屋敷群のなかにある「正(ファイブ)クロック仁」。古道具や思い出の 品が置時計や掛け時計として新しい時間を刻んでいる。

 「正(ファイブ)クロック仁」の森下正仁さんは、お菓子・パンの製造会社に勤めてい たサラリーマン時代から、古道具や古伊万里、個性的な時計や古い時計などが好きで、特 に柱時計は 300 本以上をも収集し、柱時計の修理も手掛けるようになる。収集・修理して いるうちに、古いお皿や銅製品の真ん中に穴をあければ、時計になるとひらめき、分解し た柱時計の部品も再利用し、時計を制作するようになった。それを見た家族から売ってみ たら?と勧められ、今から 20 年ほど前に京都の百万遍の手づくり市で販売したところ、 予想外に売れ、毎月のように京都や大阪の手作り市へ出店を続けたという。お客様からリ クエストを受けて時計を作ることも増え、当初大阪堺市の自宅の一室から始まった時計制 作は、庭にハーフビルドの時計工房を建て、中国地方や信州など全国各地の手作り市にも 出店するようになった。

midashi2.png

 定年を迎えた森下さんは、大阪府内で作業スペースが十分にとれる古民家を探し始めた
が、なかなかピンとくる物件がなかったそうだ。不動産屋の紹介で、京都や滋賀の古民家 も見学し、足軽組屋敷群にある現在の物件に出会い 2~3 回の現地内覧の末に購入した。 物件の付近は、江戸時代には彦根藩の施設があり、足軽たちが従事した土木作業(御普請) の資材倉庫の前を走る道は 3 間半(6.4m)の幅で、現在も「八丁目南北通り」という愛称 で市内の稲枝地域まで続く。移動出店する森下さんにとって、足軽組屋敷群にありながら もワンボックスバンが居住地まで進入できる搬入の利便性は重要だった。徒歩圏内にスー パー、郵便局、病院があり、都市ガスや下水道も通っている。森下さんはここでなら生活 できそうと思えたそうだ。物件の内部には家財道具が残っていたが、古いものが好きな森 下さんにとっては好都合。自身で整理処分をすることで不動産会社・売り主と交渉し物件 購入額を安く抑えることができた。

 「小学校の通信簿や表彰状とか親にしてみれば、放られへん(捨てられない)もんやな。
娘さんの通信簿を時計にしてほしいというお客さんもいましたよ。みんな自分のものは、 ペッと捨てられるけど、子供のものだったり、親が大事にしていた古伊万里だとか、結婚 祝いの置物だとか。。。みんなあるでしょ捨てるに捨てられないものって。」と語る森下さ ん。物件を見つけて購入するまでは早かったが、改修工事は平年の 36 倍という記録的な 大雪の影響もあり、居住できるまでに 1 年以上を要した。離れの 10 畳間の改修も自分で 改修したいと考えているものの、お客様からの時計の注文でなかなか作業が追いつかない という。時計工房は、漆喰の壁にリノベーションした柱時計がかかり、通りに面した大き な窓には、ユニークな置時計がズラリと並び、古くて新しい時計の音が土間いっぱいに隙 間なく流れている。「全国各地、出店したところで繋がりができるし、お客さんが待って いてくれる。出向いていろんな場所にいくのが、断然面白い。彦根も移住者が増えればも っと楽しい場所になる」と森下さんは語る。

1.jpg

information

工房:正(ファイブ)クロック仁

住所 : 〒522-0087 滋賀県彦根市芹橋 2 丁目8-27

TEL:080‐3852‐0721

HP:

※出店情報は SNS で発信中

bottom of page